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梓川ふるさと公園の怖い話
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~ 聞こえますか 子どもの声 ~
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梓川ふるさと公園
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唐突に公園
山間のこんなところに
人の姿は全く見えない
霊気だけが木陰から何かを窺っている
もう何年も
怖がって誰も近寄らない
*
お日様が上にある時は
誰も気づかない
誰も気にしない
しかし
午後少し遅くなると
急速に影が忍び寄る
山が深く暗くなるのが早い
それ以上に早く冷気が下りてくる
聞こえていたはずの子供たちの声が
ピタとも伝わって来ない
魔の時刻
夕方6時
黒いものが動き始める
その影を見たものは
身動きが出来なくなる
不思議な形の石になって
公園の住人になる
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誰もがフィクションと言って済ましている
昼は笑っていられるが
日が落ちたら笑いがひきつる
落武者の話を急に思い出す
村人が山間に追い詰めた時の話
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取って付けたように現れた山間の公園
物語は過去のもので済まされなかった
村人が交わした約束
高齢化社会では果たせなくなってきた
*
命の代償に
子どもの声を聞かせる
*
子どもを連れて行っても
4時には引き上げます
忘れ物をしても取りに帰ることはしません
*
梓川の流木を見たことはありますか
奇妙な形だと思いませんか
逃げ帰って来た子どもたち
*
日本海を流れる子供たちの魂
三月
ふっくらしたホタルイカ
夜になると光が宿る
*
ホタルイカは富山湾に限らず
日本海側の結構広いエリアで冬から春にかけて水揚げされる
でもなぜか富山湾のものが美味しい
信州の山からの流れは
越後で海に入り
なぜか南下する
*
*
梓川の流木を家に飾る人がいる
取り付かれたようにホタルイカを食べる人がいる
子供のころに遅くまで遊んでいて
知らぬ間に魂を抜かれた人たち
単調な響きの松本ぼんぼん
放心したように踊り続ける
呪われたような真夏の夜がよみがえる
*
今でも
夜、耳をすませば
誰もいない筈の公園から
大勢の子ども声が聞こえてくることがある
*
上高地
バスの車窓から林間に目をやると
木陰からニホンザルを姿を見せることがある
その暗い小さな影に一瞬サルでないものが混じる
気付く人は少ない
子ザルに見えた中に人の子供の顔
悲しげな視線が突き刺してくる
上高地の夕闇は一気に降りてきて時を止める
*
昨今のオーバーツーリズム
上高地はマイカーで入れない
家族連れはバスに乗り換えるか、手前で駐車して散策する
観光地からそれたただ広いだけの公園にも観光客が迷い込む
山奥から何かがじっと見ている気配
*
北海道と同じように
標高の高い地域の春も一気に姿を現す
我慢していたかのように梅が咲いて
こぶしの白い色が追いかけてくる
桜は開花したと思ったら瞬く間に白とピンクの吹雪に変わる
木蓮の大きな花びら
アメリカハナミズキの賑やかな様
ゴールデンウィークが近づいている
子どもたちがやってくる
*
ゴールデンウイーク終盤
上高地へ向かうバス
大勢の子供が乗っている
急ブレーキ
運転手は何を見たのか
車を止めて外に出る
バスの前を横切った猿の群れ
足早に去っていく
取り残された猿と思ってみたものは
一人の男の子だった
怯えたような目で見る 先はバスの中の子供たちだった
口元をゆがめ、
何か言葉を発したかとおもったら
その場に倒れ込んだ
止まっていた時が流れ始めた
運転手は我に返る
何もなかった
何も見なかった
バスに戻り運転席に戻る
先程まで騒いでいた子供たちは
誰一人声を上げない
バスが動き出した
取り付かれたようにアクセルを踏む
幅の狭いトンネルが口を開けていた
*
次の日
そのバスは川底にあった
人の姿は消えていた
*
大捜索で一人の男の子が見つかった
バスの運転手の前で倒れた男の子
でも発見されたのは梓川ふるさと公園
信州大学へ救助ヘリで運ばれた
衰弱した身体
コトバにならない言葉
譫言のように言葉が零れ落ちる
愛する家族への思い
彼は語り始めた
*
長く生きてしまったことに気付いた
*
鏡池
一周するのに30分も掛からない小さな池
白馬の近くにあるが
訪れる人は少ない
池を回っていると気付くこと
方向が分からなくなる
あちこちに樹海に伸びる細道
獣道か
子どもが行方不明になった話は聞いたことがない
そもそも子度が来ること自体が珍しい
ある日
透明で宝石色の池に
子供の遺体
表情は穏やか
少年は時を超えて
会いたい人に会えたに違いない
少年の遺体が引き上げられると
親子連れの猿影
樹海に消えていった
*
<記憶の断片 >
こんな公園
以前は無かった
使い道のない土地で強欲が悪知恵を働かせていたら
世間に合わせて”ふるさと公園”
公園にするのに国から助成金がもらえて
21世紀事業と言えば格好よく響く
この辺は日当たりの悪い北と東に向いた斜面のどん詰まり
誰も近づかない
使い道が無いから公園?
現代の合理主義かな
あるいは強欲の錬金術?
昔
ここに最後逃げ込むしかなかった人がいたら?
この辺の木や石や土を掘り起こしたら ?
封印されていた約束が蘇ったら?
時が再び刻み始めた
<記憶の断片 >
落ち武者の中に
子連れの落ち武者がいた
子どもには無理と言われても
塩尻峠を越えた時は大人たちも喚起した
松本平は一見すると豊かで平穏だった
敵対する者はいる筈がない
警戒心は両方にあった
その内、村の子供らの笑い声が緊張を解いた
落ち武者の子供らも村の子供と遊んでいた
村人の迷惑にならないように
落ち武者は山奥に入る
山の神のことを知る人はいなかった
村人が落ち武者を呪いの地に追いやったことになった
悪意は無くてもだまし討ちの形になった
山の神は子どもだけには手を出さなかった
*
<記憶の断片>
子どもが突如視界から消える
普通の事件事故のニュースのように流れてくる
やがて無事生還できる子もいれば
戻ってこれない子もいる
時のはざまに落ちた子供は存在を伝えることが出来ない
今まで聞こえていた子どもの声は本当は何だったか
其時は既に手遅れだったのかも知れない
時空のゆがみが表出する一瞬だったに違いない
*
<記憶の断片>
落武者
戦いの場からその家の主だけが落ちていくのではない
一族郎党の夜逃げのようなもの
幼い子どもが問題になる
預ける先が見つからなければ
連れて行くのだが
足手まといになるのは分かっていること
子どもの不幸を想像するのは難くない
信州に続く道端に小さな地蔵が多いと気付く人もいる
*
<記憶の断片>
親知らず子知らず
京を追われて
越の国に逃げる
阻む海岸線に
こういう名前が付けられている
子どもの声が波の音でかき消される
海から子供の声が聞こえてくる
錯乱する母親
夕闇が口を開けている
子ども声を振り腹合う
朝、目を覚ます女
目の前の山を越えれば信州松本平に導く道に入る
まもなく一族に合流できる
遠くから子どもの声が聞こえる
子どものぬくもりが蘇る
持っていたものを捨てて
海に向かって歩き出す
大事なものが沈んでいる海へ
本当に大事なもの
海の底で子供の手に触れて
心が救われるのが分かった
子どもの声が女を包んでいた
*
<記憶の断片>
春が近づいて
ホタルイカ漁 が活発になる
夜に出ることもある
その日の夜
光の中に少し様子が違うものがある
深い青色
光は抑えられている
ほんの一瞬
目が合ったような錯覚に襲われる
漁師は漁を早めに切り上げて
家族のところへ急ぐ
漁からいつもより早く帰った父親に
何時より強く抱きかかえられた子は
嬉しくて思い切り抱きしめ返したが
はっとして力を抜いた
子どもにしか分からない
深い悲しみが伝わって来た
涙をためた子を見て
父親は満足そうにしたが
同時に不安な気持ちに襲われた
漁師は夜の漁を躊躇うようになった
夜の富山湾
観光客相手の漁師しかいなくなった
*
<記憶の断片>
鏡池に沈む少年は
生きているかのように美しく
目を見開いていた
視線の先は彼方の記憶を留める
光に満ちた世界だろうか
少年の水死水難事故の話は
直ぐに広まって直ぐに収まった
弔いのために山奥に入った僧侶は
そのまま帰ってこなかったが
探しに行こうと言う人はいない
少年のことはタブーになった
鏡池に近づくこともしない
鏡池は、温泉客、観光客、風景写真家、来る人は限られている
ときどき道を間違える人が出て騒ぎになる
村人の誰も見ていないのに
少年の声は 全員の耳に残っていた
子ども連れの観光客が来ると
耳を澄ますようになった
*
<記憶の断片>
「子どもの声がうるさい…」
と言って児童公園が閉鎖された事件があった
それは本当に子どもの声だったのか
無駄に遊んでいる土地で
強欲が渦巻いていた
子どもの声を返して欲しい
子どもの声を閉じ込めるな
その町も少子化が進む
少ない子供を閉じ込める
子どもは大人になって子どもを裏切る
そういう大人を見ている山奥からの視線に気づかない
でも
子どもの声が
夜になって少しずつ近づいてくる
子供と言う過去を捨て大人に
夜の闇が
子ども声を届ける
それはいつかのあなた
※
▶【English Version】
※
*
”コレハフィクションデス”
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