梓川ふるさと公園の怖い話

怖い話

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梓川ふるさと公園の怖い話

◆◆◆

~ 子どもの声 ~





※

この前、新潟に行ったときに聞いた話。只の作り話と言っていたけど、どうしても気になって、メモにしておいたもの。新潟では、多分、珍しいと思うけど、その飲み屋さん、地下に入っていく。結構しっかりした作りで、建物の上物を見ていると想像できない広さと言うか深さと言うか。反響を気にしてか、どのテーブルも話声はぼそぼそ。地元で合流した人の話もぼそぼそ、ぼそぼそ、と始まった。

※

新潟は大きな町だが掴みどころがない。海、港、運河、川、取り残された陸地、橋、また海。山は遠い筈なのに近くに感じる。だらだら続く街並みは却って温かいもてなしに感じる。

夜は表情を変える。人通りは極端に少なくなる。奥深く闇の中で眠っていたものが動き出す。人のものでない気配が漂ってくる。

小さな影は川べりから這い上がってくる。そのまま、老人の風体になって歩き出したと思ったら、例の居酒屋の地下に入っていく。

無表情な老人は、いつものテーブル、いつもの席に着く。誰かが合図を送った訳でもないのに、ぼそぼそと、、しかし、耳のすぐそばで話しかけられたようにはっきりした声で、話し始めた。視線はどこか遠くを見ているかのように。かすかな記憶を一つ一つ確かめるように、ぼそぼそと過ぎ去った時間を紐解き始めた。

※



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梓川ふるさと公園

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唐突に公園

山間のこんなところに

人の姿は全く見えない

霊気だけが木陰から何かを窺っている

もう何年も

怖がって誰も近寄らない


*


お日様が上にある時は

誰も気づかない

誰も気にしない

しかし

午後少し遅くなると

急速に影が忍び寄る

山が深く暗くなるのが早い

それ以上に早く冷気が下りてくる


聞こえていたはずの子供たちの声が

ピタとも伝わって来ない

魔の時刻

夕方6時

黒いものが動き始める

その影を見たものは

身動きが出来なくなる


不思議な形の石になって

公園の住人になる


/


誰もがフィクションと言って済ましている

昼は笑っていられるが

日が落ちたら笑いがひきつる

落武者の話を急に思い出す

村人が山間に追い詰めた時の話


/


取って付けたように現れた山間の公園

物語は過去のもので済まされなかった

村人が交わした約束

高齢化社会では果たせなくなってきた


*


命の代償に

子どもの声を聞かせる


*


子どもを連れて行っても

4時には引き上げます

忘れ物をしても取りに帰ることはしません


*


梓川の流木を見たことはありますか

奇妙な形だと思いませんか

逃げ帰って来た子どもたち


*


日本海を流れる子供たちの魂

三月

ふっくらしたホタルイカ

 

夜になると光が宿る


*

ホタルイカは富山湾に限らず

日本海側の結構広いエリアで冬から春にかけて水揚げされる

でもなぜか富山湾のものが美味しい 

 


 

信州の山からの流れは

越後で海に入り

なぜか南下する

 

*

 


 

*

 


梓川の流木を家に飾る人がいる

取り付かれたようにホタルイカを食べる人がいる

子供のころに遅くまで遊んでいて

知らぬ間に魂を抜かれた人たち


単調な響きの松本ぼんぼん

放心したように踊り続ける

呪われたような真夏の夜がよみがえる


*


今でも

夜、耳をすませば

誰もいない筈の公園から

大勢の子ども声が聞こえてくることがある


*


上高地

バスの車窓から林間に目をやると

木陰からニホンザルを姿を見せることがある

その暗い小さな影に一瞬サルでないものが混じる

気付く人は少ない

子ザルに見えた中に人の子供の顔

悲しげな視線が突き刺してくる

上高地の夕闇は一気に降りてきて時を止める


*

 

昨今のオーバーツーリズム 

上高地はマイカーで入れない

家族連れはバスに乗り換えるか、手前で駐車して散策する

観光地からそれたただ広いだけの公園にも観光客が迷い込む 

 山奥から何かがじっと見ている気配

 

*

 

北海道と同じように

標高の高い地域の春も一気に姿を現す

我慢していたかのように梅が咲いて

こぶしの白い色が追いかけてくる

桜は開花したと思ったら瞬く間に白とピンクの吹雪に変わる 

木蓮の大きな花びら 

アメリカハナミズキの賑やかな様 

 

ゴールデンウィークが近づいている

子どもたちがやってくる 

 

* 

 

ゴールデンウイーク終盤

上高地へ向かうバス

大勢の子供が乗っている

 

急ブレーキ

運転手は何を見たのか

車を止めて外に出る

 

バスの前を横切った猿の群れ

足早に去っていく

取り残された猿と思ってみたものは

一人の男の子だった 

怯えたような目で見る 先はバスの中の子供たちだった

口元をゆがめ、

何か言葉を発したかとおもったら

その場に倒れ込んだ

 

止まっていた時が流れ始めた 

 

運転手は我に返る

何もなかった

何も見なかった

バスに戻り運転席に戻る 

先程まで騒いでいた子供たちは 

誰一人声を上げない 

 

バスが動き出した

取り付かれたようにアクセルを踏む

幅の狭いトンネルが口を開けていた 

 

* 

 

次の日

そのバスは川底にあった 

人の姿は消えていた

 

* 

 

大捜索で一人の男の子が見つかった

バスの運転手の前で倒れた男の子

でも発見されたのは梓川ふるさと公園

信州大学へ救助ヘリで運ばれた

衰弱した身体

 

コトバにならない言葉

譫言のように言葉が零れ落ちる

 

愛する家族への思い

彼は語り始めた

 

*

 

長く生きてしまったことに気付いた

 

*

 

鎌池

一周するのに30分も掛からない小さな池

白馬の近くにあるが

訪れる人は少ない

 

池を回っていると気付くこと

方向が分からなくなる

あちこちに樹海に伸びる細道

獣道か

子どもが行方不明になった話は聞いたことがない

そもそも子どもが来ること自体が珍しい

 

 

ある日

透明で宝石色の池に 

子供の遺体

表情は穏やか

 

少年は時を超えて

会いたい人に会えたに違いない 

 

少年の遺体が引き上げられると 

親子連れの猿影

樹海に消えていった 

 

 

* 

<記憶の断片 > 

 

こんな公園

以前は無かった

使い道のない土地で強欲が悪知恵を働かせていたら 


世間に合わせて”ふるさと公園”

公園にするのに国から助成金がもらえて 

21世紀事業と言えば格好よく響く

 

この辺は日当たりの悪い北と東に向いた斜面のどん詰まり

誰も近づかない 

使い道が無いから公園?

現代の合理主義かな

あるいは強欲の錬金術? 

 

昔

ここに最後逃げ込むしかなかった人がいたら?

この辺の木や石や土を掘り起こしたら ?

封印されていた約束が蘇ったら?

 

時が再び刻み始めた 

 

<記憶の断片 >

 

落武者の中に

子連れの落ち武者がいた

子どもには無理と言われても

塩尻峠を越えた時は大人たちも歓喜した

 

 松本平

一見すると緑豊かで平穏だった

 敵対する者はいる筈がない

落武者の列を遠目に見る村人

子ども 女 老人

警戒心は両方にあった 

その内、村の子供らの笑い声が緊張を解いた

落ち武者の子供らも村の子供と遊び始めた

 

村人の迷惑にならないように

落ち武者は山奥に入る

山の神のことを知る人はいなかった 

村人が落ち武者を呪いの地に追いやったことになった 

悪意は無くてもだまし討ちの形になった

山の神は子どもだけには手を出さなかった 

* 

<記憶の断片> 

 

子どもが突如視界から消える

普通の事件事故のニュースのように流れてくる

やがて無事生還できる子もいれば

戻ってこれない子もいる

時のはざまに落ちた子供は存在を伝えることが出来ない

 

今まで聞こえていた子どもの声は本当は何だったか

其時は既に手遅れだったのかも知れない

時空のゆがみが表出する一瞬だったに違いない 

 

* 

 

<記憶の断片> 

 

 落武者

 

戦いの場からその家の主だけが落ちていくのではない

一族郎党の夜逃げのようなもの

幼い子どもが問題になる

預ける先が見つからなければ

連れて行くのだが

足手まといになるのは分かっていること

子どもの不幸を想像するのは難くない

 

信州に続く道端に小さな地蔵が多いと気付く人もいる

 

 

*

 

<記憶の断片> 

 


親知らず子知らず 

 

 

京を追われて

越の国に逃げる

阻む海岸線に 

こういう名前が付けられている

 

 

子どもの声が波の音でかき消される

海から子供の声が聞こえてくる

錯乱する母親

 

夕闇が口を開けている

子どもの声を振り払う

足を速める

襲い掛かる波しぶき

波しぶきの先が子どもの小さな手に変わる

母親の足が止まる

倒れ込む

 

 

朝、

目を覚ます女

波は穏やかになっていた

目の前の山を越えれば信州

松本平に導く道に入る

南ルートを逃げた一族に合流できる 

 

 

遠くから子どもの声が聞こえる 

子どものぬくもりが蘇る 

持っていたものを捨てて

海に向かって歩き出す 

大事なものが沈んでいる海へ 

 

 

本当に大事なもの

海の底で子供の手に触れて 

心が救われるのが分かった

子どもの声が女を包んでいた 

 

* 

 

<記憶の断片> 

 

春が近づいて

ホタルイカ漁 が活発になる

夜に出ることもある

 

その日の夜

光の中に少し様子が違うものがある

深い青色

光は抑えられている 

ほんの一瞬

目が合ったような錯覚に襲われる 

 

漁師は漁を早めに切り上げて

家族のところへ急ぐ

 

漁からいつもより早く帰った父親に

何時より強く抱きかかえられた子は

嬉しくて思い切り抱きしめ返したが

はっとして力を抜いた

 

子どもにしか分からない

深い悲しみが伝わって来た

 

涙をためた子を見て

父親は満足そうにしたが

同時に不安な気持ちに襲われた

 

漁師は夜の漁を躊躇うようになった

夜の富山湾

観光客相手の漁師しかいなくなった 

 

*

 

<記憶の断片> 

 


鎌池に沈む少年は

生きているかのように美しく

目を見開いていた

視線の先は彼方の記憶を留める

光に満ちた世界だろうか

 

 

少年の水死水難事故の話は

直ぐに広まって直ぐに収まった

弔いのために山奥に入った僧侶は

そのまま帰ってこなかったが

探しに行こうと言う人はいない

少年のことはタブーになった

鏡池に近づくこともしない

 

鎌池は、温泉客、観光客、風景写真家、昔も今も、来る人は限られている

ときどき道を間違える人が出て騒ぎになる 


村人の誰も見ていないのに

少年の声は 全員の耳に残っていた

 

子ども連れの観光客が来ると

耳を澄ますようになった

 

* 

 

<記憶の断片> 

 

 

「子どもの声がうるさい…」 

児童公園が閉鎖された

保育園が廃園に追い込まれたところもある

 

それは本当に子どもの声だったのか

 

強欲には子どもの姿を見ることが出来ない

無駄に遊んでいる土地に見える

強欲は連鎖する

強欲が子供の声を奪う

 

子どもの声を返して欲しい

子どもの声を閉じ込めるな 

 

その町も少子化が進む

少ない子供を閉じ込める 

 

 子どもは大人になって子どもを裏切る

 そういう大人を見ている山奥からの視線に気づかない

でも

子どもの声が

夜になって少しずつ近づいてくる

子供と言う過去を捨て大人に

夜の闇が

子ども声を届ける 

それはいつかのあなた 


*


名誉教授のクレーム

子どもの声がうるさい

この老人は子供の頃は信州という地に憧れていた

勉学で望みを叶え

更に信州に移り住み望みを叶えた

公園近くにマイホームも



本当に子ども声が煩かったのか

押し殺して来た遠い自分の中の心

もっと自由だった本当の自分を思い出したのか

自分の大切な心を鎮めるためのクレームか

其れさえも本人は気付いていない


*


公園は閉鎖され

洒落た住宅が立ち並ぶ

住人が過去の話を知ろうが知るまいが

やがて

住人の心のドアをたたく子ども声が訪れる

それは

公園で遊んでいた子どもたちのものか

住人となった人の過去から訪れるものか

 

*

 

 

<記憶の断片> 

 

信州もまた有数の観光地の一つ

訪れたことのある人も少なくない

進学進級を前にした3月は少人数の旅行が多い

 

興味本位でスーパーに入ると並んでいる食材の豊富さに驚くかもしれない

物流網の発達で日本中のものが並ぶ

都市部のスーパーと変わらない

 

関東、東海、北陸の近海物が鮮度良く並ぶ

その中にホタルイカが並ぶ

ホタルイカを好む人なら気付くこと

 

ふっくらと大きさも形も、何よりも鮮度がいい

どうしてこの信州の山奥で?

わざわざ選ばれて運ばれてきたような

何となくの違和感 

 

すると横から手が伸びてきて

パックを買い物かごに収める

無言無表情で去っていく老人

 

人ごみに消えるのを待って

漸く我に返る

 

子供の頃の感受性が蘇る

小さなささやき声

 

スーパーの外に出る

夢中で買った信州の食材を使ったお土産用の菓子類

中に手にした記憶のない1パックのホタルイカ

 

明朝の帰りの列車の時刻を確認する 

今どきは何もかもスマホ

 

* 

 

 

<記憶の断片> 

 

誰にも子どもの時代があった

 

発声できたかどうか分からなくても

子どもの心、子どもの声を持っていた

 

大人になる

成長する 

自分を殺すことなの?

 

子どもの声が騒音になる

 

世界中で戦争がやまない

今でも 

ウクライナ、ミャンマー、アフガン、ガザ、 イラン、

子どもを殺す大人たち

黙って見ている大人たち

 

時代も場所も状況も違うから混同しないように

と

知ったか爺が切り捨てる

無表情のこの老人は恐らく自分の子供時代を真っ先に切り捨てた 

 

何も変わっていない

何も変わることが出来ない 

 

 *

 

<記憶の断片>  

 

 沖縄

洞窟に逃げた

声を上げる子ども

聞き耳を立てるアメリカ兵

口を塞ぐ大人

子どもの声が消えた 

 

邪悪は兵士の顔を借りて言う 

子どもの声を消したのはその子の母親だ

火炎放射器のレバーを引いた


*

 

<記憶の断片>   

 

 落武者

一族郎党

 

逃げ延びる一団

 

子どもの声がかすかに届くが姿は

女たちの辛い表情

旅の疲れだけではない

人形のようなものを背にしている

 

足手まとい誰かが口にして

子どもの影が消えた

 

声だけが耳に残った

 子どもの声を人形に託した

 本当に大事なものを間違えている

大人にも言葉にできないこと

何処で間違えたかと言う疑問を

空腹と疲労がかき消した

 

* 

 

<記憶の断片>  

 

 

山の神

 

最初は山歩きをしていた人が

奥まった場所で道に迷って

目印に石を重ねただけだった

 

 あちこちに小さな目印

夜になると役に立たない

 

丁度、奥深い山の中央、登りと下りが交差する場所がある

ここを間違えると帰れなくなる

まるで、この世とあの世の境界のようだった

 

誰かが帰れなくなった魂を弔うように

小さな祠を作った

みすぼらしくても

道に迷ったものには光り輝く

 

誰もが手を合わせるようになった

誰となく山の神というようになった

 

 

山は高さより深さが怖い

平坦に見えて安心して深く入ると帰れなくなる

 

親子連れは平坦さに油断する 

 

 小さな祠に子どもの名前が書かれるようになった

 

古くかすれてしまった名前の上に新しい名前が書きこまれる 

 

 

信州の山は今も高く美しい

登山を楽しむ者たちの事故があるとニュースで話題になる

 

高山を取り囲む森や林の奥深い迷路

ニュースにもならない

信州の森には小さな祠、小さな地蔵があちこちにある

一つ一つが子供を守ろうとしている 

 

醜い大人たちが森を破壊し、祠も地蔵も重機で歯化するまでは 

 

<記憶の断片>  

 

 謎(なぞ)

 

 記憶をたどっても分からないことが色々ある

その一つが

上高地の少年と鎌池の少年

同じ人物なんだろうか 

上高地の話はリアルだけど

鎌池は 情緒的、幻想的、曖昧でどこかべ世界の話に聞こえる

でも時空のどこかで繋がっているように感じる

 

そして、

未だ明かされていない物語があるように。 

 

 *

<記憶の断片>  

 

 謎(なぞ)

 

子どもの姿が見えないと必死で探す親

一方で子供が訴えている声に 耳を傾けない親

 

 本当の愛を奪うかのような強欲の正体は何だろう

 

人は社会の入り口に立って何を差し出しているのか

 

 子どもの声ですか?

 

子どもの声が不都合なものの正体は? 

 

 *

<記憶の断片>  

 

 落武者

京を逃れて信州に向かう

北回りは海に沿って

南周りは木曽を抜けていく

盗賊の多い南周りは男ども

比較的落ち延びやすい北回りは女どもと子どもら 

信州の地で落ち合うことを誓って

旅に出る

 

信州には石標や地蔵が多い

末の時代になっても再会を果たしたいと言う思いだ

風の音、川のせせらぎ、鳥のさえずり

小さな地蔵は耳を傾けている

積んであるだけの石たちも耳を澄ましている 

 

*

 

<記憶の断片>  

 

ペット

ペットは子どもの代用?

支配する対象としてペットを見る人

素直な純粋な気持ちの存在として見る人

ペットと接することで自分が失ったものに気付く人もいる


 

人は自分たちが長い時間をかけて失ってきたものに

本当に気付けるだろうか 

その気付き行動を変えるだろうか

 

生きるため、家族を守るためと言って

自分や家族の大事なものを置き去りにしてしまった

生きるためと言って、人を殺し、子供まで殺している

 

自分だけはペットで癒されているから大丈夫なのか

 

 

*

 

子どもの声が届かない本当の理由は分かりますか?

 

* 

<記憶の断片>  

 

 

DNAが作り上げた虚構

安心が欲しいと言う無限ループ

DNAの奴隷になった人間

 

唐突に松本清張の鼾(いびき)を思い出すかもしれない 

 

 *


<記憶の断片>  

 

 

深海魚のメギス。正しくはニギス(似鱚)。白身魚で形も味もがキスに似ているのでメギス。北陸の特産と言ってもいい。目が大きいので目ギスとか。

不思議なことに、このポピュラーとも言えない奇妙な魚が信州に運ばれてくる。寒さが抜けきらない春先。新鮮なメギスが当然のように、まるで里帰りをするかのように、信州の山奥に運ばれてくる。

ローカルスーパーの鮮魚売り場。メギスとホタルイカが隣合わせに並ぶ。微妙な空気感に気付く人は少ない。多くの人には、無感心なエリア。

しかし、一部の人は争うように数パック纏めて買う。取り付かれたような表情の老人たちだ。老人たちは、自分が今いる場所も時代もはっきりしない。子どもだったころを思い出そうとしていることだけは分かる。

今年も塩の道を伝って旬のメギスが運ばれてきた。

海の底でメギスが見たもの

大きな目に涙が浮かんでいたのは悲しい話だったに違いない


 *


<記憶の断片>  

 

山の神の悲しみ

山の神の怒り



人が山へ入る理由は様々

人は山を恐れていたし、大切にしていたし、感謝もしていた


強欲は奪うことしか考えない

強欲には感謝はない

用済みと思えば山に捨てて知らん顔


強欲は年を重ねて動けなくなった猟犬を置き去りにする

血のつながりが無い子供を置き去りにする

自分の親さえも山深く置き去りにする


山の神は一つ秘湯の悲しみを拾い上げ自分の背に担ぐ

山の神は怒りを胸にするだろうか

山の紙もまた悲しみとなって一体化する

怒りではだれも救えないことを知っている


*


森の樹木を切り倒して

太陽光パネルを並べる

人の道を迷うさまが見える

心を失った結果


森で動物や植物と遊んでいた子ども

社会人になって戻ってきて

木を切倒す


*

*



子どもの声を聞かずに自分の強欲を優先させた母親

母親の邪心が若い夫に入り込み非情の手を下した

この母親には涙を流す資格もない

母親こそが子殺しの真犯人


*


少年は突然の侵入者に驚いた

母親が連れてきた男の目論見は、しかし、瞬時に見抜くことが出来た

幼いながら家を守ろうと必死になった

少年の心配を母親に伝えたのは誰か分からない

少年が同居する祖父母だったか


愚かな母親は子どもの疑いを夫に伝えた

我が子の気持ちを軽んじるだけで済まないことに気付かない

子どもは何度も母親から裏切られていた


卒業式

子どもが集う最後の日

子ども声が届けられたかもしれない日

声は届かなかった


*


京都

不思議な場所

落武者の出発点

落武者と家族の葛藤

丹後は京都の奥

日本海へ通じる

富山ほど有名ではないが

ホタルイカが辿り着く


*


母親に狂気を蘇らせたのは

語られない理由があった

少年が命を落として漸く

母親の耳に子ども声が届き始めた


本当に大切なもの

母親は今

心の奥深くに

仕舞い込んで

溜息を吐いた


*

<記憶の断片> 


散骨


月の夜

安曇野市

梓川の隣を流れる黒沢川

満開の桜が夜空に浮かび上がり吸い込まれる

人影は少ない


ここの桜を楽しむ人は地元の人

それも両岸をゆっくり往復して楽しむだけ

橋が渡っている場所では、橋の中央に立ち下流の行く末に目をやる


よる、桜の花びらを川にそっと落とす人がいる

桜の花びらの下に小さな骨

祈りと願いを込めて砕いた骨は小さな粒になっている


よく見ると

花びらを撒く人が他にもいくつか


犀川から信濃川

その向こうの日本海

桜の花びらと砂粒の骨が向かう先


昔、守ることが出来なかった子供を迎えに行く旅の始まり


小さな声が上がる


時が流れ始める


流転の再起動


しかし


※


※ 


 

 ”THIS IS FICTION”

* 

「心のビタミン」はCheck*Padモーニングサービスの一部を収録しています。チェックパッドがどこから収録しているかは分かりません。ぱらぱら眺めるだけで気分転換になります。⇒(追記)現在はそのようなサービスは終了したのでしょうか見当たりません。

索引ラベル(+)はWikipediaの日本語ページ、英語ページのタイトルを採用する。未収録の場合は適当。


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「名言 格言 一言」
「Mental Vitamin 心のビタミン」
「kotobanokokoro」

☆☆☆

心のビタミンは子供の自由教材として見てもなかなか面白い。もちろん、ビジネスマン(ビジネスウーマン)の研修教材として見ても十分。年代・世代を超えて訴えてくるメッセージをそれぞれどう受け止めるか、その時の心模様~時代背景が微妙に反映されて興味は尽きない。

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